頭で考える綺麗と現実の綺麗は別もの
去年の3月に刺繍をスタートした当初は埋め縫いを綺麗に埋める、仕上げることに注力していました。綺麗に色をのせて埋めれば、当然綺麗に埋まるだろうという考えで、データを作成して刺繍を試みていました。しかしそうはなりませんでした。
というのも刺繍ソフトの画面上で綺麗に色を埋めたデータと実際に布へ刺繍したものとは別ものになる事を目の当たりにしたからです。振り返ると当たり前のことなのですが、当時はどうしてそうなるのか、頭を傾げて何時間も何度も何度も同じデータを直しては刺繍し、捨てての繰り返しでした。
紙の上に丸を書き、その丸を例えば赤で塗りつぶすとなると当然、絵の具で赤を塗りますね。赤く塗りつぶすと、綺麗に赤く塗りつぶすと、薄く塗りつぶすと、まだらに塗りつぶすと、グラデーションをかけて塗りつぶすと、などいくつも塗る方法がある訳です。
そして当初、綺麗に塗りつぶすことは、いわゆるベタ塗りで塗りつぶすことが良いこと、当然刺繍もそうすれば綺麗に刺繍されると思ったのです。
これも振り返れば当たり前のことでしたが、筆で液体の絵の具を使うこと、デジタルで塗ることと刺繍は全くの別ものなのでした。つまり刺繍は、針で布に穴を開けて、糸を通しての繰り返しをすることで塗りつぶしが実現できる、ということでした。いやいや当たり前だろと思いますが、当時は脳みそを切り替えられませんでした。
アナログイラスト、デジタルイラストを刺繍へ転換する
まさに転換と言って良いでしょう。脳みそを切り替えて刺繍データを作ることにしました。と言ってもまだまだ学んでいる段階ではあります。
冒頭の塗りつぶすということになると、針穴を多く開けるということです、当然のことですが、糸も多く使うことになります。そして刺繍で厄介なのが、刺繍は必ず縮むということです。針穴を多く開ければ開けるほど、対象の布は縮み、刺繍を重ねれば重ねるほど、目が詰まっていき、硬くなっていきます。この状態をできるだけ避けて、バランスよく刺繍をすることが結果として綺麗な刺繍に繋がる、という脳みその転換が必要だったのです。
ではどうするのか?同業者の方々も日々研究していると思いますが、当店でも現在試行錯誤です。そしてある最適解の1つを少し見つけられた気がします。
画像は赤い髪の友人のワッペンを作成するにあたり、4つの色(赤、ピンク系)をグラデーションして刺繍しました。どのようにデータを作成すると綺麗になるか、まだ研究段階ですが、綺麗にできたと思います。